NHK有働アナ「浮き足立つ」を誤用して神妙にお詫びした瞬間(NEWS ポストセブン 10月31日(水)7時5分配信)
今朝、こんな記事を見かけました。
9月に発表された文化庁の「国語に関する世論調査」の平成23年度調査の結果がきっかけなのか、最近、日本語の誤用についてのニュースをよく見かけますね。
あの、「にやける」は「薄笑いを浮かべている」ではなく「なよなよとしている」という意味が正しいんですよー、っていうやつです。
古文を勉強すると、今普通に使っている単語も昔は違った意味だった、すなわち、単語の意味が時代を下るうちに変化していくということが多いとわかります。
たとえば、広辞苑第六版によると、「凄まじい」の第一義は「期待や熱意が冷えてゆく感じがする。気乗りがしない。」。用例は源氏物語の『浮舟』帖と『柏木』帖から採られています。昔はこんな意味だったんですね~。
ですから、日本語の「誤用」も、ある程度仕方ないと思います。言葉は人に使われるうちに意味合いを変えていくものなのです。
【なぜ「誤用」が問題視されるのか】
それでも日本語の「誤用」が気になる方は多いでしょう。
これは電車の中の化粧や食事を許せるか許せないかという問題と似ていると思います。
許せる許せないの感覚は、人によっててんでバラバラみたいです。
ちなみに、ゆーりんは、日本語の「誤用」も電車内の化粧や食事もあまり気にしないほうです。なのですが……
では、もし電車内の化粧や食事を気にしない人が今よりずっと増えたら、どうなるでしょうか?
新幹線ならともかく、通勤電車の中でハンバーガーやフライドポテトを食べる人が増えたら、ちょっとニオイがきつそうです。食べこぼしや食べかすが自分の洋服に付かないか、心配することも多くなりそうです。
化粧も同じです。マニキュアなんてされたら、狭い車内にシンナーの匂いが充満して、気持ち悪くなりそうです。
ファンデーションの粉も飛び散りやすそうですよね。
電車内の化粧や食事が当たり前になってしまうと、ニオイを不快に思うことや、食べかすや粉などで服が汚れることが増えてしまいそうです。
一張羅のスーツや着物を着た日は電車に乗れなくなって不便になるだろうなぁ、なんて思います。
さて、ここで本題です。日本語の「誤用」あるいは「乱れ」がもっと広まったら、どんな不便が生じるでしょうか?
日本語の「誤用」については色々な問題が指摘されていると思いますが、最も大きなものの一つは
ではないでしょうか。だって、言葉はコミュニケーションの道具なのですから。
【日本語の「誤用」のせいで言葉が通じない、とは】
ビジネスの場で、新入社員が「僕的には~・私的には~」という表現を使ったら、上司に十中八九怒られます。
これは、新入社員がたとえ頭の中では「大事な仕事だ」と思っていても、相手には「ふざけている」と受けとめられるからです。
つまり、新入社員は自分の真剣な態度を言葉を通しては伝えられなかった、新入社員と上司の間で言葉が通じなかったと言えると思います。
日本語の「誤用」が広まると、こんなふうに言葉の通じない状況が多くなりかねない――そんな懸念が、「『誤用』は気持ち悪い」と思う要因になっているんじゃないかなと思います。
たとえば、文化庁月報平成24年10月号(No.529)によると、
問2 「手をこまねく」について尋ねた「国語に関する世論調査」の結果を教えてください。
答 本来の意味ではない「準備して待ち構える」という意味だと回答した人の割合が,本来の意味である「何もせずに傍観している」と回答した人を上回りました。
とのことです。
「待ち構える」と「傍観する」では意味が正反対。「アレ? コイツどっちの意味で言ってるんだ?」と迷ってしまいそうですね。
【尊敬語と謙譲語がごちゃまぜ?】
ゆーりんが実際に見聞きして困っちゃったことのある日本語の「誤用」は、こんな感じです↓
“コンビニでお弁当とジュースをレジに持っていきました。
高校生のアルバイトと思われるおにーさんにこう言われました。
おにーさん「お箸、ご利用しますか」
ゆーりん「(。・д・) 」”
正しくは「お箸、ご利用になりますか」ではないかと思います。
「ご○○になる」は尊敬語ですが、「ご○○する」は謙譲語です。ですから、「ご○○する」といえば、普通は話し手のほうが主語です(自分がへりくだり、お客様を持ち上げるということ)。
この後、ダメ押しで「ジュースのストロー、ご利用しますか」とも言われたので、口が滑ったのではなく、このおにーさんが本当に間違えて敬語は覚えているのだと思います。
ゆーりんはどちらも一瞬反応できなくて、一緒にいた旦那さんに「いえ、結構です」と言ってもらいました。
日本語は主語や目的語の省略のある言語です。
ですから、古文の授業では、敬語の使われ方から主語や目的語を見分けるという訓練をよくさせられます。
参考:源氏物語イラスト訳で古文・国語の偏差値20アップし大学受験に合格する勉強法 【帚木137-2】古文単語からの主語の見分け
この「敬語の使われ方から主語や目的語を見分ける」というテクニックは、古文だけでなく現代の会話でも無意識に使っているんじゃないかなーとわたしは思います。
コンビニで「お箸、ご利用しますか」と言われたら、文脈上、絶対に主語は客のほうです。
でも、少なくともわたしは、これに反応できなかった。
「ご○○しますか」と話しかけられると、聞き手は無意識のうちに「主語は話し手(話し相手)のほうである」と思ってしまい、反応できなくなってしまうのではないでしょうか。
「ご覧になられますか?」みたいな二重敬語であれば、誤用は誤用なんでしょうけど、意味は明確です。
でも、尊敬語と謙譲語を間違って使ってしまうと、主語が誰だかわからなくて聞き手を混乱させてしまいます。
なので、尊敬語と謙譲語の区別だけはちゃんと覚えてもらわないと困っちゃうなぁ、とゆーりんは思うのです。
電車内の化粧や食事についても、日本語の「乱れ」についても、許せる許せないの論争は不毛だなぁと思っちゃったりします。
感覚がひとによって全く違うから議論が平行線になりがちなんですよね。
でも、ニュースなどをきっかけに時々はそういう議論をして、許せる派/許せない派の均衡を保っておくことって実は大事なのかもしれません。マナーとか言葉づかいとかに、あまりに厳しくなりすぎず、かといってぐだぐだにもならず、いい具合のバランスで世の中やっていくために(^-^)
言語学っぽいかもしれないお話でした。