2005年公開のアメリカ映画、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ミュンヘン』の感想です。
知り合いにジョン・ウィリアムズの音楽が良いと勧められた観た作品なのですが、実際に観てみたところ、暗殺シーンがスリリングすぎて没頭してしまい、音楽はあまり頭に残っていませんでした(笑)
スピルバーグって「ジョーズ」や「ジュラシック・パーク」を作った監督ですもんね。ひとをハラハラドキドキさせる天才の才能が遺憾なく発揮されています。
特に、あわや標的の娘を爆発に巻き込んでしまうのかというシーンは、女の子がホントに無邪気で可愛いこともあり、緊張します。
しかし、ラストのセックスシーンだけは、音楽がぐっと印象に残りました。
"仕事"を終えてやっと再会できた妻とやっとセックスできた主人公なのに、その脳裏にはミュンヘン事件の人質殺害シーンが次々とフラッシュバックしていく――
不眠による疲労も相まって、主人公の表情が凄惨なことこの上ありません。腰の振り方も機械的なのにがむしゃらで痛々しい。
そんな一連のシーンを彩る楽曲が、"Remembering Munich"。力強いのに冷たく低い女性の声は、私たちの心を容赦なく抉ります。
こんなに哀しいセックスシーンを未だかつてわたしは観たことがありません。
ストーリーについては「日本人にはわかりにくい」という評も見ますが、イスラエル問題についてある程度の知識があれば、むしろ非常にメッセージがつかみやすい映画だと思います。
復讐は新たな復讐を生み、関わった人々の心を傷つけていくということ。いわゆる「復讐の連鎖」ってやつです。
日本ではアニメでもよく取り上げられるありがちなテーマですけれど、同時多発テロ後のアメリカで、スピルバーグという大物監督(しかもユダヤ人の!)が描いたということに大きな意味があるんでしょうね。