昨年から上映中の日活ロマンポルノ「ロマンポルノリブートプロジェクト」、全5作。
前回観た『アンチポルノ』は、タイトルの示す通りポルノ映画とは言えないものだったので(レビューはこちら。ネタバレ注意。→http://yulin.cocolog-nifty.com/yuletideblog/2017/02/post-53ed.html)、今度こそロマンでポルノな映画を期待して、2回目としてこの『ジムノペディに乱れる』を観に行ってきました。
……が、正直、期待外れでしたorz
確かにロマンでポルノな映画でしたが、わたしには合わなかったです。
以下、ネタバレレビューです。
まずですね、登場人物がクズばっかりなんですよ。
男もクズですが、あんなクズな男を愛する女たちのほうも意味がわかりません。
だってね、金をせびるような男なんですよ?
なのに、ハタチそこそこと思われる専門学校生の女の子が「私には先生が必要なの」と誘惑したり、元奥さんが60万円貢いだりとか、なんなんですかね。
古谷のことを「教え子に手をつけた」と責め立てる若い男の子(専門学校生の女の子の彼氏)がまだまともな人間に見えるレベルのクズ揃いですからね。こいつだって彼女に暴力を振るってるんですから(しかも顔に!)相当なクズのはずなんですけどね。
いえ、別に登場人物がクズでもいいんですよ、ふつうの映画なら。
でもこれはポルノ映画なんですよ?
AVでいつでもいくらでも《濡れ場》が見られるのが当たり前な世代としては、わざわざポルノ映画を観に行くなら、ちゃんと濡れ場に至るまでの説得力あるストーリーが欲しいわけですよ。なぜ男女は惹かれ合ったのか。そのストーリーを贅沢に楽しみながら興奮を高めたいわけですよ。
なのに、冴えないおじさんがなぜか女に異常にモテてヤりまくれるとか、安っぽいエロゲの世界ですかこれは。最初からハーレム。ありますけどね、そういう抜きゲー。
とはいえ、ロマンポルノの制約上、10分に1回濡れ場を入れないといけないのだから、どうしたって最初からやりまくる羽目になるんですよね。だったら、主役の男が女になぜモテるかなんて描いている暇はないのかもしれません。特に序盤は。でもそれでは濡れ場に至る説得力が出なくて、観客がモヤッとしてしまう。
だとすると、10分に1回に必ず濡れ場という設定には、もはや限界があるのではないでしょうか。
でも、わざわざポルノ映画を観に行くに当たって求めていたものはストーリーだけではありません。
映画ならでは、映画館ならではの映像美。
この点については心から満足できました。
女優さんの裸、素直に感動できるほどきれいでした。おばさんの年齢でも裸体が美しいのは本当に凄いと思います。映画館の大画面でこんなに美しい裸体を拝見できるとは。
板尾さんをはじめとする役者陣は、お姿が美しいだけでなく、素晴らしい演技をされていたと思います。
なのに、脚本や演出が彼らを生かし切れていない感じがします。
特に板尾さん演じる古谷は、なぜか女性を引き寄せてしまうカッコよさのある大人の男、という設定なのでしょうけど、その大人の男のカッコよさを煙草とけだるさで表現するって……いつの時代ですか……。あんなに絶えず煙草を吸っていたら、絶対口が臭いですって。あ、口だけじゃ済まないか。
そして、女性が登場→ジムノペディが流れる→濡れ場 という流れの単調さ。ブラジャーのずらしかたなどの細かい演出も含めて、みんな毎回同じ。これがひたすらに繰り返されるのは、演出効果なんだろうと推測して冷静に見ようとしても、やっぱり飽きました。
しばらくはジムノペディを聞くたびに笑っちゃうと思います。良い曲なのにな、あれ。
セカチューの監督さんは、ベタな演出が好きなんでしょうか。セカチューの映画は見たことがないのでよくわからないんですが。
本作品の良かった点は、先にも挙げた映像美と、あとはそこかしこに散りばめられたギャグが面白かったところです。
20も年下(たぶん)の女の子の家から豚の貯金箱を盗み出して、雨のなか割って五百円玉をぶちまけて必死に拾い集めるシーンのみずぼらしさ。
彼女を寝取られちゃった男の子が公開の場で「愛ってなんですか、手当たり次第に水を撒くことですか」「先生、教え子に手を付けたんですよね」「っていうかなんで俺のTシャツ着てるんだよ!」と意外と冷静に順序立てて(他のお客さんたちは、「あーそりゃ確実に手を付けられてるね、怒ってもしょうがないわ」ってきっと納得したはずですw)責め立てるシーンの滑稽さ。この修羅場シーンは、女優、専門学校生の女の子、その彼氏が座席に3人並んで座っているのを見た時点で絶対に来るぞと予想していたのに、それでもなお面白かったです!
自殺するぞと脅したうえに金までちらつかせて女を抱いたクズ野郎と、よりによって前妻をそいつに抱かせて金を貢がせるクズ野郎の二人が「最低な野郎だ」「お前こそ最低だな」と殴り合うシーンの情けなさ。
奥さんが眠っている病室におもむろに女性看護師が登場し、「え、まさかここでヤッちゃうの?」と思ったらそのまさかだったというあのシーンの最低さ。そして、案の定お医者さんたちに見つかっちゃうという。
そういえば。
結局、古谷は劇中で一度もクライマックスに達せてないんですよね。
そのせいで観てるこっちまで不完全燃焼なのかもしれません。
いや、不完全燃焼なのはやっぱり、ベタな演出に飽きたせいかな。
とりあえず、あんまり面白いとは感じられなかったので、他3作を観る気は失せてしまいました。
ロマンポルノはわたしには面白くなかったという事実を確認できたことだけは良かったです。
(『アンチポルノ』は面白かったですが、あれは普通の映画として面白かったのであって、ロマンでもポルノでもなかったと思っています。)
こういう映画が絶賛されていた時代もあったんですよね。やっぱり世代の差なんですかねー……。