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Pokémon GOのAR写真とか。アニメの感想とか。たまに難しいことも。不思議ちゃんの新婚生活13年目@東京をまったり記録。

知的財産権と司法について読書

知財戦争』 三宅伸吾著 新潮新書 2004/10発行

という本を読みました。

 知的財産をめぐる最近の動向を「攻防」という観点からまとめたのが本書。新聞記者らしく、足で集めた情報が満載だ。第1章は本誌でも連載した「遺伝子スパイ事件」。本誌連載担当者が始めて知るエピソードも少なくなかった。遺伝子スパイ事件がはからずしも炙り出した、日本の知財に対するナイーブぶりから筆を起こし、世界各国のとりわけ米国と中国の抜け目なさを述べた後に、筆は強い特許を世界に先駆けて認める勇気に乏しい、われらが特許庁に及ぶ。審査期間の短縮を義務付けた特許審査迅速化法の制定に反対したのも特許庁自身であった。

 最終章ではアンジェスMGで問題になった「未公開株譲渡問題」を取り上げている。著者の主張は、これが「問題」になってしまうこと自体が、「知財立国・日本」への壁なのだという点につきる。

Amazon.co.jpの商品説明文から引っ張ってきました。…えーっと、こういう本です(汗)

今年の4月に買って少しずつ読んでいったんですが(多分ふつうの人ならすぐ読める類の本です^-^; わかりやすくドラマチックに書かれていますし、文字も大きいです☆)、ようやく読み終わりました。

とても面白い本です。知的財産っていう言葉にぴんとくるものがある方にはお勧めです!

(ただ、2004年の本なので、知財という移り変わりの激しい分野に関する本としては、もう古くなっちゃってるところもあるかもしれません。青色発光ダイオードの訴訟が和解に終わったところなどは書かれていないんですよね。)

以下、自分が読んでみて思ったことなのですが…

著者は、司法や政治家の対応の遅さにずいぶん辟易していらっしゃるようです。司法を目指してる大学生としては耳の痛い話がたくさんです。裁判が遅ければ、特許の認定が遅ければ、それだけビジネスを邪魔してしまう……という観点は今まで持っていなかったかもしれません。人権擁護などの話は大学でも意識して聞いていましたが、ビジネスと法を結びつけるということを、今までわたしはあまりしてこなかったのだなと反省です(>_<)

(冬学期は経済の授業がんばって受けるつもりです--;)

覚書として、筆者の提言のなかで印象に残ったものを自分なりにまとめておきます。

○発明者報奨と特許法三十五条(職務発明規定)について

職務発明(しょくむはつめい)とは、「従業者等」(会社の従業員など)が職務上行った発明のことであり、「使用者等」(会社など)は職務発明を発明者である従業員から承継することを勤務規定などによってあらかじめ定めておくことができる(特許法35条2項の反対解釈)。会社が従業員から職務発明を承継した場合、会社は相当の対価を従業者に支払わなければならない(特許法35条3項)。

この規定に基づいて会社に対して200億円の支払いを命じる判決がでたこともあり(東京地裁平成16年1月30日判決「青色発光ダイオード事件」、その後高裁で和解。詳しくは後述)、社会的にも職務発明が注目されるようになった。

Wikipedia職務発明」の項より)

多くの企業は発明報奨を社内規定で決めています。しかし、2003年4月22日の光ディスク読み取り装置に関する発明をめぐる裁判で、最高裁は「金額に関する社内規定があっても、それが『相当の対価』(cf.特許法35条)に足りなければ不足分を請求できる」との判断を初めて示しました。特許法35条が強行規定にあたることが明確にされたわけです。その後の「青色発光ダイオード事件」を機に、次々と同様の裁判がなされるようになります。

ここで問題なのは裁判所による『相当の対価』の算定ルールがあいまいであることです。企業は将来多額の発明報奨の支払いを判決で命じられるリスクを背負わされ続けることになっているのです。

大手企業だけでなく研究者の間にも、職務発明規定の見直しを求める声、発明報奨は企業と研究者間の自由契約とするべきだという声は多くあります。しかし、法学界から「職務発明規定が廃止されれば、雇用の流動性のない日本では労働者が搾取される危険がある」と反論があったこともあり、裁判所が発明報奨の額を決める職務発明規定は今まで残っています。

しかし、これでは「発明者=大人を子どもと見る行き過ぎた父権主義」ではないか、企業と研究者とが事前に発明報奨について契約を交わしていれば済む話だ、と筆者は論じています。