本日2022年11月30日、Coccoさんの新曲『お望み通り』がDigital Singleとして配信リリースされました!
配信媒体FANYの音楽番組 『ミュージック・カマー』(11月13日)で初めて聞いて以来、この曲にすっかりハマってしまったので、Coccoさんの他の曲とも比較しながら、感想や考察(という名の邪推なんですが)を書いてみます。
- 『お望み通り』感想:歌詞が少ないが癖になる連呼系
- FacebookにてCoccoさんご本人による解説
- Coccoさんは何をまだ痛がっているのかを邪推
- 歌手Cocco、みんなのアイドルCoccoの抱える痛み。パブリックイメージを強いられる苦悩。
- 余談:効果音いろいろ
『お望み通り』感想:歌詞が少ないが癖になる連呼系
この曲は配信限定とはいえシングル曲だというのに、随分と思いきった構成をしています。
サビが「まだ痛いな まだイタイな」「お望みの通り 浅はかな道理」をひたすら繰り返す連呼系なのです。
Coccoさんでサビが連呼系な歌としてすぐに思いつくのは『パンダにバナナ』(アルバム『プランC』所収、2014年)や『Light up』(アルバム「エメラルド」所収、2010年)です。
『Light up』はサビをずっと"Light up"とだけ歌っていたところ、大サビでいきなり、同じメロディーを「目を手を心を」と歌い上げ変化球を投げてくるので、非常に印象に残るんですよね。
『パンダにバナナ』のサビは「パンダにバナナ Beau-Banana」が繰り返されますが、曲のラストでメロディーと歌詞がともに変わります。
ところが、『お望み通り』は『パンダにバナナ』や『Light up』よりさらに思いきっていて、大サビでの歌詞変更もほとんどない*2うえに、メロディーも同じものの繰り返しなのです。
なので、もっと多くの歌詞(Coccoさんの真骨頂!)やメロディーを味わいたかったという思いも正直あります。
が、リフレインはとにかく癖になりますね。
セクシーな声で「まだ痛いな」、ずっと聞いていられる気もします。
(余談ですが、ふと「Cocco 連呼」で検索をかけたら、『花柄』(アルバム『ザ・ベスト盤』所収、2011年。初披露はSINGER SONGER名義で2005年のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2005にて)の「ぶっ*す」の連呼が印象に残っているかたが多いようで😂
確かにあれには度肝を抜かれますね。
わたしは音楽フェスには行ったことがないのですが、『花柄』はフェス映えするだろうなと思います。)
FacebookにてCoccoさんご本人による解説
続いて、『お望み通り』の歌詞について考察したいのですが、実のところ、考察の余地はそんなにないのです。
というのも、Coccoさんご本人がFacebookで『お望み通り』について解説してくださっているからです。
ということでまずはこちらをご一読くださいませ。
わたしの拙い言葉でまとめさせていただくと、大人(サバイバー)はどんなに辛く傷ついていても「大丈夫であってほしい」という世間のお望みの通りに精一杯振る舞うものなのだ、まだ痛くてイタイけど、という歌が『お望み通り』なのだそうです。
『有終の美』(アルバム「アダンバレエ」所収、2016年)の「私は 大丈夫」を思い出しました。
あれも、「結ばれぬ恋の散り際」*4に、まだ痛いけれどやけくそでも無理やりでも前へ進もうとして言った「大丈夫」ですよね、きっと。
「サバイバー」という言葉が「アダンバレエ」を想起させたのかもしれません。*5
Coccoさんは何をまだ痛がっているのかを邪推
というわけでCoccoさんご本人が解説してくださっているので、『お望み通り』の考察は終わり……ではございません。
ひたすらに繰り返される「まだ痛いな まだイタイな」という歌詞。
いったいCoccoさんは何をまだ痛がっているのでしょうか。
気になりませんか?
ここからは完全にわたし個人の下衆の勘繰り、邪推なのですが、Coccoさんの今まだ抱えている痛みについて考察してまいりたいと思います。
考察の上でヒントとしたのが、この歌が連呼系であることです。
『お望み通り』は、歌手Cocco、みんなのアイドルCoccoが歌うからこそ生きる曲のような気がするんですね。
「まだ痛いな まだイタイな」と同じメロディーで繰り返すあたりは、プロの歌手とプロのバンドが演奏するから聞かせられるのであって、素人がカラオケで歌ったとしたら場が白けそうではないかと感じたのです(そうは言っても、カラオケで配信されたらわたしも歌ってみたいんですけどね😂)。
ということは、歌詞のほうも歌手Cocco、みんなのアイドルCoccoとして書かれたものかもしれない。
わたしはそう邪推しました。
歌手Cocco、みんなのアイドルCoccoの抱える痛み。パブリックイメージを強いられる苦悩。
歌手Cocco、みんなのアイドルCoccoの抱える痛みといえば、コアなファンのかたにはぴんとくるものがあるかもしれません。
プロムツアー後のCoccoさんの独白
参考資料のひとつは、Cocco Live Tour 2022「プロム」の後にCOCCO CHANNELにアップロードされたこちらの動画です。
「今回のツアーがほんとに楽しかったから、次のツアーが心配なんだぜ。
みんなが聞きたい、みんなが好きな、みんなの大切な、みんなが望む曲をちゃんと歌えるかまだ不安なんだぜ。
でも、ちゃんと25周年のベストライブをやるって、だからその前に好きにしていいって、今回こんな楽しいツアーをやらせてもらえたから、頑張らないといけないんだぜ。
こんなに楽しいライブはほんとに初めてだったから、誰のことも考えないで、自分がやりたいことだけ、ほんとに自分が歌いたい歌だけ歌わせてもらえたから。
だから頑張れるか。
えいえいおーだぜ。
ほんとにこんなに楽しい思いをさせてもらって、ありがとう。
元気100倍だから大丈夫だな。
えいえいおー。
ありがとう」*7
背景を少し説明すると、プロムツアー*8のセットリストは全曲がCocco 自粛生活・おうちdemoトラック(2020年)以降の曲(2021年のアルバム「クチナシ」と2022年のアルバム「プロム」の曲+α)で占められていたそうで、『強く儚い者たち』などの往年のヒット曲はいっさい歌われなかったらしいのですね。
動画によると、そんな「自分が歌いたい歌だけ歌わせてもらえた」プロムツアーをやる代わりに、25周年のベストライブ(「Cocco 25周年 ベストツアー 2022 〜其の1〜」)をすることが決められたとのことです。
この「Cocco 25周年 ベストツアー 2022 〜其の1〜」は現在ツアー真っ最中ですが、セットリストを見ると、2001年の活動中止以前の曲が半分以上を占めています。
「みんなが聞きたい、みんなが好きな、みんなの大切な、みんなが望む曲」とはおそらくこの活動中止以前の曲たちのことでしょう。
『強く儚い者たち』との倦怠期
Coccoさんの最大のヒット曲『強く儚い者たち』(シングル、1997年)については、よりはっきりとCoccoさんの抱える複雑な心境が語られています。
新しいアルバムを作っても、新しいうたを歌っても、結局いつもリクエストされるのは「強く儚い者たち」で、
ありがたいけど、なんだかな、的な、この曲と私の間には
熟年の腐れ縁夫婦の倦怠期みたいな、なんとも説明しがたい
関係性があって(不仲なわけではないんですよ、愛してるんですよ、女房を。大好きなんですよ、でもちょっと色々思うとこあるわけです的な)
昔の曲を歌ってほしいファンと新しい曲を歌いたいCoccoさん
つまり、(実際にファン、特にコアなファンがどう思っているかはともかく)「みんな」=CoccoファンはCoccoさんに活動中止以前の曲を歌ってほしい、(ひいては、活動中止以前の曲のような曲をまた作ってほしい)と望んでいる(とCoccoさんやそのスタッフは考えている)けれども、Coccoさんは新しい歌を歌いたがっているというギャップが生じているようなのです。
先ほど挙げたYouTube動画「また笑って会えますように!」のコメント欄などを見る限り、特にコアなファンには、Coccoさんに自分が歌いたい歌を自由に歌ってほしいと思っている人が多いようなのですが。
サブスクの視聴回数、YouTubeのPVの再生回数、カラオケでの人気度合い、そしてライブツアーのチケットの売れ行きなどの指標が、≪Coccoの人気曲は2001年活動中止前の曲≫だと示してしまっているのでしょうか。
『お望み通り』は『White dress』『Rockstar』に通じる(かもしれない)
Coccoさんの新曲『お望み通り』は、2021年「クチナシ」所収の『White dress』『Rockstar』と通じるものがあるような気がします。
まず『White dress』ですが、歌詞の中の"my new white dress"は昔のCoccoらしい新曲のことを意味しているという説があります。
190名無しの歌姫 (ワッチョイW 9333-WDaC)2021/02/25(木) 08:35:36.42ID:D5PkQX070
白のドレスって昔のCoccoの象徴的な物でもあったわけで
あの曲は昔のファンもしくは過去のCocco自身に依存する人へのちょい皮肉にも聞こえなくないなって思ってた
愛を与えても満足しきらない貴女
でも大丈夫
ほらまた新しいドレス(曲)よ
でもその為に私はこれだけ血を流している
的な?英語歌詞だと昔はストレートに書くことが多かったよね
Cocco Part169 https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/musicjf/1613461589/190/
なぜ「私の新しいドレス」(my new white dress)が「あなたのため」(for you)なのか、これで謎が解けるのではないでしょうか。
次に『Rockstar』ですが、こちらは歌詞に繰り返し"I don't wanna be your Rockstar"と出てきますね。
Coccoさんは「みんなが聞きたい、みんなが好きな、みんなの大切な、みんなが望む曲」を歌う"your Rockstar"ではもうありたくないのです。
"Keep your life safe and sound All by yourself"という箇所は非常にわかりやすく、「過去のCocco自身に依存する人」に対して、自分の人生は自分でなんとかしろ(意訳)*10といわば突き放して歌っているものだと想像できます。
ということで、『お望み通り』『White dress』『Rockstar』はいずれも歌手Cocco、みんなのアイドルCoccoの抱える痛み、ひと言でいえばパブリックイメージを強いられる苦悩を歌った曲なのかもしれません。
凡人には共感できない境地ですが。
(同じく「クチナシ」所収の『アイドル』も、タイトル通りみんなのアイドルCoccoの立場から歌った歌だと思います。
ですがこちらは、アイドルであっても「あなたひとり 引き止められない」という無力感を歌った歌でしょう。
『お望み通り』とはまた違いますね。
いずれにせよ凡人には共感できない境地ですが。)
以上、Coccoさんが『お望み通り』でまだ痛がっていることとは、新しい歌を歌いたいのにファンからは昔の(ような)歌を望まれるというギャップへの苦悩ではないか、という考察でした。
Facebookの解説記事にはそんなことひと言も書いていなかったので、これは完全にわたしの邪推です。
いずれにせよ、現在進行中のベストツアー其の1では、ファンの「お望み通り」に活動休止前の歌を歌い上げてくださっています。*11
余談:効果音いろいろ
冒頭のガソリンエンジンの音、滾りませんか?
今後EVが普及していくと、この音が車の発信音だということがわからない若者も増えていくのですかね?
なんだか少し寂しいです。
前奏の終わり(1番冒頭)と1番の終わり(2番冒頭)にさりげなく入っている「ぱらららーん」という音は、おそらく魔法のキラキラステッキの音です。
「Cocco 25周年 ベストツアー 2022 〜其の1〜」で『お望み通り』を歌う前に振っていました。光っていました!
何かのアニメのグッズなのか、実は100円ショップあたりに売っていたりするのか。
Coccoさんの好みのステッキがどんなものなのか気になります。
曲を通じてハンドクラップ(手拍子)が入っているのも良いですよね。
ライブでお客さんが手拍子できたら一体感が増しそうです。
(わたしはそういうの苦手なんですが💦)
ということで、Coccoさんの新曲『お望み通り』の感想・考察(?)記事でした。
最後までお読みくださりありがとうございます!
*1:Cocco お望み通り Music Video - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=0lVno9LAP4g 2022/11/30
*2:「浅はかな」が「あカさタな」「はまやらわん」に変わるだけですね。言葉遊びの範疇です
*3:Facebook https://www.facebook.com/CoccoOfficialFB/posts/pfbid02k435Q3T3UtobquKUc4D5yamzW57H37bm8demadWUk5SVsQ9rf5UP5cZUSFg9xSB9l 2022年11月17日
*4:Cocco 「有終の美」 Music Video+メイキング - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=luvUz7H_Kz0 2016/08/10
こちらの動画のキャプションに「2016年8月24日リリースとなるCoccoのニューアルバム「アダンバレエ」より、結ばれぬ恋の散り際を歌った「有終の美」のミュージックビデオが完成!」とあります。
*5:『アダンバレエ』発売に関してCoccoは「今を生きるすべての生存者(サバイバー)に捧げます。」というコメントを寄せています。
Cocco、「生存者による生存者のための」ニューアルバム『アダンバレエ』詳細解禁! (2016/07/11) 邦楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム) https://rockinon.com/news/detail/145568
*6:「また笑って会えますように!」COCCO CHANNEL - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=x5sPljzgRos 2022/06/10
*7:勢いあまって全部文字起こししてしまいました。言うまでもなく著作権侵害なので、権利者のCoccoさんから警告が来たら削除いたします
*8:わたしは抽選に漏れて参戦できなかったのですが
*9:Facebook https://www.facebook.com/CoccoOfficialFB/posts/pfbid0ZwoFQaa7GJwDQLawJmcp3xwJyfd4AThoDx8bJyWxmP2mVMuz2TzcMh5uv3AkEyYfl 2022年2月24日
*10:下線部、2022/12/04追記
*11:下線部、2022/12/04追記