魔法少女まどか☆マギカのスピンオフシリーズのひとつ、『魔法少女すずね☆マギカ』のネタバレありレビューです。
まず、これは第1巻の表紙を見たときから思ってたことですが、
……アリサのビジュアルがエヴァっぽすぎませんか?
髪型(インターフェイスヘッドセットっぽい髪留めも含む)も、強気だけど実は弱い性格もそっくりだし、
魔法少女服はプラグスーツっぽいし、
技「ブースト」は語感が「ザ・ビースト」(これはアスカじゃなくマリだけど)っぽいし。
まぁ可愛いのでなんでもいいんですけど←
さて。
本作品の感想ですが、単体作品として見ると、正直微妙です。
けど、まどかマギカのスピンオフとしては面白いテーマ設定で、まどマギへの考察が深まる作品だったと思います!
以下、ネタバレばかりなので未読のかたはご注意を!
*** 以下ネタバレ ***
さて。
本作品の感想ですが、単体作品として見ると、正直微妙です。
魔法少女による魔法少女狩りというストーリーはおりこマギカでもかずみマギカでもあって既視感を覚えますし、
展開が駆け足でしたし、
伏線もなく「実はマツリが重要人物だった」「黒幕は未登場の人物だった」っていう種明かしは正直冷めました。
けど、まどかマギカのスピンオフとしては面白いテーマ設定だったと思います。
『おりこマギカ』は、本編へのアンチテーゼ。
世界を犠牲にしてでもまどかを救おうとするほむらに対しては、個人を犠牲にしてでも世界を救おうとする織莉子。
また、魔法少女はいつか魔女になるという絶望の運命論に対しては、キリカの「私は安らかに絶望できる!」や、ゆまの「いつかはいまじゃないよ」 。*1
『かずみマギカ ~The innocent malice~』のほうは、原作の平松正樹先生が完結巻(第5巻)の最終ページでテーマを書いてくださっているのでわかりやすいですね。*2
魔法少女システムの真実を知った者ならだれもが一度は考えるであろう、「魔法少女システムに対する否定」を試みた結末を描いた物語。または、その試みにおける、少女たちの"innocent malice(無邪気な悪意)"について。
最終話でカオルと海香がキュゥべえを指して「無邪気な悪意の塊」と言っていますが、プレイアデス聖団のやってきたことこそが間違いなく無邪気な悪意の塊なんですよね。身勝手にかずみを生みだしたり、有無を言わせず魔法少女たちの魂を抜き取ったり。
また、食へのこだわり、「お腹が減って食べたいと感じたら あなたはまだ生きたいと思ってるわ」「ご飯を食べたら あなたが食べた命のぶん がんばって生きなさい それが希望になる」(第3巻・第12話)もひとつの重要なテーマでしょう。
『たるとマギカ』は完結巻(こちらも第5巻)が未発売なので保留で。
そして、この『すずねマギカ』のテーマは何でしょうか。
『まどかマギカ』アニメ本編のラストで、まどかは全ての魔法少女の願いを全肯定しました。
「希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、私、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます。きっといつまでも言い張れます。」(第12話)
でも、本当に?
抱いた希望が間違いだったってことも、あるんじゃないかな――。
それがわたしの考える『すずねマギカ』のテーマはこれです。
まず提示されるのは、軽い気持ちで願い事をしてしまい、あとで後悔する、というパターンです。
「力が欲しい…? 皆を見返したい…? それだけ…? (中略)こんなことなら…魔法少女になんか…なるんじゃなかった…!!」というアリサのほうはまだ救いようがあるかもしれませんが、
「ほんの出来心」で「お姉ちゃんを消してほしい」と願ってしまったハルカのほうは……。
また、本人はちっとも後悔していないけれど救いには至らないであろう願い事のしかたも提示されました。
それがカガリの「復讐したい」という願い事です。
まどかの願いは確かに魔法少女にひとつの救いをもたらしました。
しかし、神となったまどかでも救いきれないものがあります。
ひとつは、『まどかマギカ』本編でも描かれたように、魔女が生まれなくなっても、人の世の呪いが消え失せるわけではないこと(魔獣の存在)。
そしてもうひとつが、少女たちの抱く希望が、本当に"希望"に満ち溢れたものばかりではないということです。
アニメ本編第2話でキュゥべえが「意外だなあ。大抵の子は二つ返事なんだけど」と言うくらいです。
魔法少女はさやかのような尊い希望を叶えた子たちばかりではないのでしょう。
実のところ、アリサやハルカのように、出来心やその場の思いつきで命を懸けるほどでもない望みを叶えてしまった少女のほうがむしろ多数派なのかもしれません。
【参考文献等】
*1
【蝸牛の翅(かたつむりのつばさ)】 『魔法少女おりこ☆マギカ』二巻ネタバレ感想 2011/6/13付 http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20110613
*2
平松先生によると、「『魔法少女』という非情の現実を受け止めきれず、『亡き友』をエクスキューズに、結局は自分たちを救うために、『かずみ』という残酷な魔法を使い続ける――少女たちの無邪気な悪意の物語。」
※各作品のテーマを考えるに当たっては、これまで読んできたたくさんの感想・考察記事(ツイート等を含む)が血肉となっています。
本当はそれらの感想・考察すべてを参考文献として掲げるべきだと思うのですが、いま改めて検索してもドンピシャのものがヒットしてこなかったりしたので、諦めました。すみません。
まどマギシリーズの感想をネット上に書き留めてくださったすべての方々に感謝いたします。
※本記事はブクログに書いた自分のレビューから転載したものです。