こんにちはー。ゆーりんです。
サークルの合唱団で、定期演奏会のプログラムの作る仕事の手伝いに携わってます。
テストが終わって暇人になっちゃったので、他の仲間がテストがんばってる間に、わたしが色々仕事しなきゃいけないようです…がんばります(>_<)
で、今日ここに書こうと思うのは、こんな仕事について。
わたしたちのサークルは次の定期演奏会で「クレーの絵本 第1集」という組曲を歌います。この組曲はパウル・クレーという画家の5枚の絵にちなんで詩人の谷川俊太郎が詩を書き、その詩に曲がつけられたものです。だから、指揮者さんからプログラムにぜひとも元になったクレーの絵を載せたい、というご要望を受けたのです。
でも、プログラムに絵を載せることには引っ掛かりがあります。著作権の問題です。
プログラムには曲の歌詞が載ったりしていますよね。もちろん、曲を演奏すること自体だって音楽という著作物の利用です。だから、ちゃんとその分の著作権料をJASRACを通して歌の著作者に払っています。プログラムに絵を載せることも、絵という著作物の利用なので、無断でやったら著作権の侵害にあたるかもしれないのです。
そこで、プログラムに絵を載せることは本当にできるのか、どうしたらできるのかということをわたしが調べることになったのです。
まずチェックすることはこの四つ。
(1)保護される著作物等に該当するか否か
クレーの絵画が著作物にあたり、保護の対象となるのは議論の余地なし、でしょう。
クレーは日本人ではありませんが、外国人の著作物も日本では保護されます。著作権に関する国際条約の代表的なものにベルヌ条約があります。日本もこの条約を結んでおり、加盟国の国民の著作物または加盟国で最初に発行された著作物を保護する義務があるのです。
クレーは1879年にスイスに生まれ、ドイツに渡ったりした後に、1940年にスイスで生涯を閉じました。まだ少し調べただけなのですが、「クレーの絵本 第1集」で取り上げられた絵はいずれも、クレーがドイツの総合芸術学校「バウハウス」の教師だった時代に描かれたものと考えられます。ドイツもスイスもともにベルヌ条約の加盟国です。
(2)保護期間内のものであるか否か
これが結構重要な問題!
著作権には保護期間があり、保護期間を過ぎていれば権利が消滅しているので自由に使えるようになるのです。
日本だと、著作者がだれかを特定することができる場合、その著作権は著作者の死亡を起算点として50年が経過するまで保護されます。
クレーが亡くなったのは1940年なので、保護は1990年12月31日までになります。じゃあ保護期間過ぎてるじゃん! わーい!
……と議論を打ち切ることのはまだ早いのです。なぜなら、クレーは日本の人ではないから(汗) アメリカだと死後70年保護されるって聞いたことがあります。スイスは? ドイツは!?
そもそも、外国人の著作物のことを考えてるのに、日本の法律を調べて意味があるのかっていう疑問も湧いてきたんですが…。
著作権に関する基本的条約である「ベルヌ条約」では、内国民待遇を定めている。
外国の著作者に対しても自国の国民と同一の保護を与えるということである。したがって、外国の著作物を日本で利用する場合は、その外国の著作権制度がどうなっているかを調べなくても、日本の著作権法に従って判断すればよいことになる。(改訂版著作権が明解になる10章 著者:吉田 大輔 出版ニュース社 2003/05
「1-5 国際的な広がりをもつ著作権」より)
で、この内国民待遇の原則が保護期間についても適用されるそうです。ただし…
ただし、著作権の保護期間は必ずしも世界各国共通ではない。死後50年を原則として、それよりも長い保護期間を採ったり、短い保護期間を採っている国々が存在する。ベルヌ条約やTRIPS協定に加盟している国で本国の保護期間が日本より短い場合にはその短い限度で日本もその国の著作物を保護すればよいこととされている。
(同書「6-4 外国著作物等の保護期間」より)
じゃあ、日本の著作権法に従って、死後50年で考えて大丈夫なのかなあ…。
ドイツだと、アメリカと同じく死後70年まで保護されちゃうみたいなんですけど。これって本当に日本では適用されないんですかね(>_<)
短い場合には但し書きがあるのに、長い場合については何も書いてくれてないので非常に不安です~。
(3)権利の内容に含まれる行為であるか否か
(4)権利制限に該当しないかどうか
大学のサークルの定期演奏会のパンフレットに絵を載せる、というのは著作権の保護の及ぶ利用形態のひとつなのか、ということです。
学校の授業での利用だと、権利制限に該当する場合があるはずなんですよね。大学生の活動だとどうなんでしょう。
この(1)から(4)を調べて、自由には利用できない場合となってしまったら、著作物などを利用するための契約=利用許諾契約を権利者との間で結ぶ必要が出てきます。でも、クレーって死んじゃった人ですよ。権利者って一体誰なんでしょう。相続されてたり譲渡されてたり、別の団体が管理してたりする可能性があるのです。音楽の著作権がJASRACで管理されているみたいにね。
ちなみに、絵画はたいてい美術館が所蔵しているものなので、美術館にも許諾をとったりしなきゃいけないのかなあとはらはらしていたのですが、所有権と著作権は別物なので、原作品、つまりもともとの絵を利用しない限りは著作権者の許諾のみでよいとのことです。ここは一安心。
というわけで、現状でわからなくなってしまった点は次の通り。
・大学の合唱サークルの定期演奏会のパンフレットに絵を載せることにはやはり著作権が絡んでくるのか?
・日本・スイスとドイツで保護期間が違うが(ドイツは死後70年、日本・スイスは死後50年)、クレーの絵はどの国の著作権法が適用されるのか? ドイツの著作権法が適用されるとしても、ベルヌ条約に内国民待遇が定められているから、50年でよいのか?
・著作権の保護期間が過ぎていたら、本当に誰にも断りなく載せて問題がないのか?
・許諾契約を結ぶとしたら、誰と結べばよいのか? クレーの絵の著作権を管理しているのはどこ?
・著作権料がかかるとしたら、いくらくらいになりそうなのか?
・絵を載せるとしたら、データはどこからとってくればいいのか?
以上をこちらで相談してみることにしました。
「著作権テレホンガイド」
毎週月~金曜日 10:00~12:00及び13:00~16:00
TEL(03)5353-6922
「専任相談員が著作権制度に関するお問い合わせや著作物の利用についてのご相談に応じています。」とのことなので……。一個人が相談に乗ってもらえるものなのかちょっと不安ですが、一応、本で読んだくらいの知識は持ったはずなので…がんばります^-^;
参考文献: