夏って、実のところとっても長い季節だと思うのです。
ひとつは、春がとても短い季節だからでしょう。
5月になると、時候の挨拶だって「初夏の候」になってしまいます。
街路樹がちっちゃな若草色の葉っぱを芽吹かせていたかと思えば、行く春を惜しむ間もなく、さわやかな新緑はあっという間に雄々しい深緑に染まっているのです。
もうひとつは、秋の始まりの時期がしばしば「夏の終わり」と捉えられるからでしょう。
9月に入った頃からゆるゆると平均気温は下がっているのだとしても、暑い日は暑い!
ひとと会ったときに「過ごしやすい季節になりましたね」という挨拶が自然に出ないうちは、秋が来たと実感することはできません。
さて、今日書きたいのは、夏の終わりではなく始まりについてです。だって今は5月ですからね。
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4月から5月は、街にいちばんお花があふれる季節です。
あるお花が散ってしまってもすぐに別のお花が咲き乱れて、まるでお花のリレーのようです。
そのお花のリレーを見ていると、木々の葉っぱが色を濃くしていくのにつれて、お花の色もだんだんと鮮やかになっていくように思うのです。
春といえば、ほとんど真白のような淡い淡い“桜色”のソメイヨシノですけれど、あの花はほんとうにあっという間に散ってしまいます。
あとを引き継いで街を彩るのは、ハナミズキや八重桜の“薄紅色”。
その次に一斉に咲き誇るのは、大紫のツツジたち!
“紫色”のツツジのお花は歩道沿いをびっしりと埋め尽くしますから、ふだんお花に目を留めないひとだって気づくことが多いでしょう。おそらく、お花に関心のないサラリーマンさんたちがソメイヨシノの次に気づくお花があるとしたら、このツツジでしょう。それくらいツツジの色は鮮烈で、支配的です。
こんなふうに木々やお花の色が鮮やかになってゆくにつれて、いやおうなしに気持ちが夏に向かって高まってゆくのだと、わたしは思います。
だから毎年、夏はいつの間に始まりを迎える、長い季節になるのです。
5月も半ばになった今、バスの車窓からは、そこかしこのおうちのお庭で“赤”や“黄色”の色とりどりのバラが咲きほこっているのが見えます。
そして、今年も空に向かってまっすぐに茎をのばしている、タチアオイ。
今はまだ根っこに“紅色”のお花がひとつふたつ咲いているだけですけれど、あの茎のてっぺんまでお花が咲く頃、夏は盛りを迎えるのですね。
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……という日記を書こうと数日前から考えていたら、ついに今日、紫陽花のお花まで見かけてしまいました!
まだ、ほとんど黄緑色の、若いお花でしたけどね。まあるいぽんぽんのようなあのお花。つぼみは開いてしまいました。
あああ、もう、見まごうことなく初夏なのです。梅雨なのです。行く春を惜しむ間もなく。