年が改まれば
新しい気持ちになるように、
季節の花が綻んだのを見ると
いつも
溜め息をつくしかないような
そんな思いが
胸に蕾むのです。
――世界には廻りめぐるものが多すぎる。
夜明けはどうせ来てしまう、
あなたの眠る街が
夜景を彩る日と 雨雲にけぶる日と、
月はチェシャ猫 哂いながら 満ちてゆき、
そして
また あの花が。
その時に
何を思っていたのか
何を想われていたのかは
とうに散っているけれど、
この目に広げられた風景画、
低い囁き声とその必然、
シャンプーの匂いとすべらかな肌に、
胸に蕾んで引き裂くような痛み、
あなたの味、
ぜんぶ まだ、蘇る。
季節の花が綻んだのを見ると
いつも
溜め息をつくしかないような そんな思いが胸に滲みて、
電車は走り去る、
あなたを乗せて。
窓には葵の花がよぎるのに
あなたはそれに気付きもしないで
泣き喚いたってよかったのに
静かな静かな嗚咽だけ残して
電車は走り去る。