紫陽花が枯れて、葵の花が咲く頃
今年もまたあの人を思い出す。
紫陽花色の花火は なぜか私に悲しみを呼んだ。
大切な人が傍に居て、美しい光景が広がっている、完璧すぎる風景の中で。
降っては消えていく火の玉たちは
いつの間にか枯れていた、雨を呼ぶ花に似る。
紫陽花が枯れて、葵の花が咲き乱れる頃
今年もまたあの人の思い出を塗り重ねていく。
もうずいぶん色あせてしまったけれど
季節が移ろいゆくのと同じだ いつか私も全て忘れてゆく。
そんな他愛も無い現実を
どうしても受け入れられなくて、花火を怖がる真似をしてみた。
何もかも忘れてしまうなら
何もかも消えてしまうなら
どうして せめて残せないのだろう?
今この瞬間に胸に広がる重みを 脚に広がる冷ややかさを
言葉にしないままの あなたへの想いを
(それさえも、すぐにぬりかさねられてしまうから。)
紫陽花が枯れて、葵もとうに枯れていたのに
まだ 私はあの人を忘れてはいなかったみたいだ
薄れてゆく憎しみと畏怖を 喉のうちで弄ぶ。
いつか引き裂いてしまえるように