検証・安保法案 -- どこが憲法違反か(長谷部恭男 編)のレビューです。ブクログより転載(http://booklog.jp/users/yulinyuletide/archives/1/4641131929)。
安保法案についてはかねてから関心がありましたが、反対派の人たちの意見にはにわかに頷きがたいものが多かったので、不満でした。
たとえば「戦争法案、反対!」と言われても、個別的自衛権だけでも日本が侵略されたら戦争は起こりうるのに……と疑問に思ってしまったりして。
そこで、安保法案の違憲性や不合理性について、個別的自衛権と集団的自衛権の違いを踏まえ、今国会に提出された条文案を参照しながらコンパクトに論じてくれている本を探していました。
(特にポイントだったのが「条文案を参照しながら」のところです。わたしは元法学部生なので、法律を学ぶならきちんと条文に当たらなくてはならないという信条があるのです。)
この『検証・安保法案」はそのニーズに見事に応えてくれた一冊でした。
204ページの本ですが、その半分ほどが資料編に費やされており、資料編の大部分は条文案です。安保法案の主要部分が現行法と対照された形で掲載されています。
本文で条文の具体的な箇所に言及しているところでは、対応する条文の掲載ページが「→資料5頁」といったようにすぐ横に付されているため、簡単に条文を参照しながら読み進めることができます。
欲を言えば、2014年7月1日の閣議決定も、条文案と並んでたびたび言及されていたので、これも資料編に載せてくれたほうが参照しやすかったなと思います。
もっともっと欲を言えば、首相や大臣等の答弁についてもピックアップして資料編に載せてくれればよかったのに、と思いました。
というのも、条文案の解釈について人によって言っていることが全然違うということが、法案の違憲性のひとつの根拠として挙げられているんですね(例:p.31 「存立危機事態」について、「人によって、この条文で想定されている事態というのが全然内容が違っている」「そうなると、今回の法案が憲法違反である理由は、……そもそも内容があまりにも意味不明で曖昧不明確ゆえに無効」)。
資料編に引用すると膨大な量になるというのなら、せめて何月何日のどこでの答弁でそういうことを言っているのか注記してくれれば、本書の信頼性がより高まったのではないでしょうか。
わたしは安保法案について勉強し始めたばかりで、安保法案に関して書かれた他の本との比較はできませんが、11もある安保法案の内容・違憲性・不合理性についてコンパクトにまとめられた本書はオススメできるなと思います。