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大阪市の家庭教育条例案についての所感。

色々立場もあるような気がするので、あまり日頃のニュースについてブログを書くのは好きではないのですが、twitter大阪維新の会の家庭教育条例案を見かけて、あまりに気になったので。

この条例案のだいたいの内容について、日経新聞の引用をさせていただきます。

保護者に保育士1日体験義務化 維新大阪市議団が条例案提出へ 2012/5/2 2:28

 橋下徹大阪市長が率いる地域政党大阪維新の会」の大阪市議団は1日、子育て支援児童虐待防止などを目的とした「家庭教育支援条例案」を市議会に提出する方針を決めた。

 保護者自身に親としての心構えを持ってもらうことが必要との観点から、保護者に対し保育園や幼稚園での「1日保育士・幼稚園教諭体験」を義務化するなどの条項を盛り込む。公明との共同提案を目指しており、早ければ5月市議会にも提出する見通し。

 条例案では保護者のほか、「これから親になる人」として、中学生から大学生までに保育園などで乳幼児の生活に触れる体験学習も義務化。市長直轄の推進本部を設置し、発達障害の予防などに関する「家庭教育推進計画」を策定することも盛り込まれる。

 市議団幹部によると、行政による保護者向けの家庭教育支援を明文化する条例は全国でも異例。違反した場合の罰則規定はないが、保護者側が新たな義務を課される内容は議論を呼びそうだ。幹部は「親自身の成長を促し、行政がしっかり支援できる仕組みをつくりたい」と話している。

この日経新聞の見出しなどでは、「保護者に保育士1日体験義務化」のほうが取り上げられており、それは本当に意味があるのかと思ったりもしましたが、あまり気に止めていなかったのですが。

気になり始めたのは、昨日の昼ごろ、twitter条例案の以下の部分が批判的に紹介されているツイートを見たからです。

第18条

わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できるものであり、こうした子育ての知恵を学習する機会を親およびこれから親になる人に提供する

これはひどいと私も思いました。

子どもの発達障害は親の子育ての仕方が悪いからなったんだと言わんばかりで、科学的でもないし、いったい何人の発達障害のお子さんを持つ親御さんを傷つける記述になろうか、想像もつきません。

これで興味を持って条例案の全文を載せているサイトを検索し、読んでみたところ、ほかにも色々と眉をひそめてしまう箇所を見つけてしまいました。

たとえば、前文の

「近年急増している児童虐待の背景にはさまざまな要因があるが、テレビや携帯電話を見ながら授乳している「ながら授乳」が8割を占めるなど、親心の喪失と親の保護能力の衰退という根本的問題があると思われる。」

という記述には、あまりにも偏った認識が伺われます。

また、同じく前文の

「これまでの保護者支援策は、ともすれば親の利便性に偏るきらいがあったが、子供の「育ち」が著しく損なわれている今日、」

は、働きながら子どもを育てることになるであろうわたしなんかは、親の利便性を考えた支援策だってまだまだ足りていないじゃないか、と思ってしまうのです。

とはいえ、この条例案で推進しようとしている「子供の健全な成長と発達を保障するという観点に立脚した、親の学び・親育ちを支援する施策」は、おそらく今まで行政には不足していたアプローチでしょうから、そこを補充しようという条例には一定の意味があるかと思います。

それでも、条例案に掲げている施策が効果・効率性・負の波及効果をもたらさないかといった点で疑問があるのは、最初に述べたとおりです。

義務教育ではないのですから、すべての親に教育するってすごく難しいことです。

教育を受けることを義務化すると、真面目な親が「わかっているけどできないんだから助けてよ!」と追いつめられるだけではないかと危惧します。

そして、「わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できる」といった完全に誤った認識!

こんな無知な政治家がつくるような条例・施策なんて役に立つはずがない、という不信が大阪市の親の間にうまれたら、うまくいくものもうまくいかなくなるでしょう。そして、そんな不信は、このまま何もしなければ当たってしまうでしょう……。

(橋下氏には「不安だという批判だけだったら誰でもできる。対案を出せ」と言って歯牙にもかけられなさそうですね。すみません、もっと勉強します。)

京都に転勤していたこともあり、大阪府政(当時は橋下氏は府知事でした)のニュースはよく耳にしていました。

大胆だと思うことは多かったですが、少なくとも一面では的を射ている施策が多くて、橋下さんはすごいなあ面白いなあ、とずっと思っていたところです。

でも、今回のニュースで、維新の会の代表である橋下氏に対しても、(少なくとも教育政策の面では)失望せざるをえなくなりました。

 * * *

ところが。昨日16時ごろに以下のツイートを見つけてまたびっくり。

橋下徹‏@t_ishin

このご意見は理ありです。僕は市民に義務を課すことは基本的に好きじゃありません。今回の条例は市議団提案です。市政になると同じ維新の会でも市議団と市長という立場になります。市議団に伝えます。 RT @hirokook: 軽度発達障害(etc)が親の愛情不足とか太古の理論出してんじゃね

2012年5月3日 - 15:43ついっぷる/twippleから

大阪維新の会の政策=橋下氏の意見 ではなかったんですね。知りませんでした。

橋下氏の別のツイートによると、

橋下徹‏@t_ishin

そこで大阪維新の会の運営方針として、大阪府議会・大阪市議会・堺市議会をまとめた大阪全体の方針については僕が代表を務める大阪維新の会の執行部で方針を固めます。しかし各府政、市政においては、知事・府議団・市長・市議団が独立してやっていく集団にしています。

2012年5月3日 - 16:04ついっぷる/twippleから

ということなのだそうです。

議会と首長の関係についても、まだまだ勉強することだらけです。反省。。。

 * * *

さて、橋下氏が対案を出せとおっしゃるのはもっともなので、備忘録として自分の意見を以下にメモ。

個人的には、対象となる親(あるいはこれから親になる人)をある程度区分した上で施策を打つほうが効果的だと思います。

同じ「児童虐待をしていまう親」でも、望まない妊娠の末に責任感をはぐくむ機会が与えられなくて虐待してしまうケースもいれば、責任感が強すぎるうえに何らかの事情で子育てについて誰にも相談できず虐待に至るといったケースもあるでしょう。

自覚のない人に自覚を促すための施策、自覚はあるが適切な方法がわからない人のための施策、適切な方法はわかっていても事情が許さない人のための施策は、それぞれ異なってくるのではないでしょうか。

こうすると、○○な親にとっては、親への教育というアプローチよりも、今までの児童相談所の虐待防止の取り組みを補完するやり方のほうが結局は効果がありそうだ、といった検討ができると思います。

 * * *

更に余談ですが、条例案に「すべての保育園」「全ての家庭」といった表記ゆれがあったりするのを見るにつけても、この条例案は、全然議論が尽くされていないままに報道されてしまったことが伺えます。

Microsoft Wordが緑だか赤だかの波線を付けて教えてくれたりしなかったんでしょうか・・・。仕事柄、非常に苦々しく思います。自分はやらないようにしようっと。。。

条例案http://osakanet.web.fc2.com/kateikyoiku.htmlを見ています。

現時点の条例案の記述により傷つけられた親御さんもいるかもしれませんが、「発達障害が親の愛情不足に起因」という認識がまだまだ世間一般に通用してしまっているということが改めて問題提起され、あるべき「親になるための学びの支援」のあり方が議論される契機になるのだとしたら、この早期の報道にも利点があったと言えるようになるのでしょう。