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Pokémon GOのAR写真とか。アニメの感想とか。たまに難しいことも。不思議ちゃんの新婚生活13年目@東京をまったり記録。

NHK「総合診療医 ドクターG」を見て~病名を推理するむずかしさとこわさについて。

最近、NHKの「総合診療医 ドクターG」という番組をときどき見ています。

実際にあった症例をもとに再構成したVTRを見ながら、3人の研修医が病名を推理していくという番組です。

症例を描いたVTRを見せた後で「これは実はこんな病気でした!」と明かす番組は、「たけしのみんなの家庭の医学」を筆頭に色々あると思います。

でも、「ドクターG」はそれらとは一線を画しています。

ホンモノのお医者さまたち、研修医3人と進行役の先生がまるで謎解きのように知恵を出し合って病名を考えていく場面をリアルに見せてくれる番組なんです。

最初はAという病気だと考えていたけれど、次のVTRを見たらそれが当てはまらないことがわかり、別のBという病気を新しい仮説にもってくる……といった診断の過程が見られるので、すごく面白いんです!

わたしは医学には素人ですけれど、“クライアントの悩みの言葉を聞きながら、どんな問題が背後にあるのかを解き明かして、解決方法を探っていく”という方法論は、お医者さまでも法律家でも共通しているところがあるような気がして、「ドクターG」から知的刺激をいただくようにしているんです(`・ω・´)

(いちおう元法学部生ですから!)

 * * *

もう1か月以上前になってしまうんですが(^-^;

個人的に特に感銘を受けた回が、7月18日の「第10回 患者の訴え『体のあちこちが痛い』」でした。

取り上げられたのはこんな症例です。

患者は、体の調子がおかしいと訴える52歳の男性。「だるいし、あちこちが痛いし、会社に出るのもつらい。家族からはサボり病と言われ…」。眠りたくても 眠れず、朝は起きづらく…とにかくつらいと訴える。ドクターGは問診するうちに、男性が半年前に、大手製造メーカーから系列の工場へ出向したことを知 る…。事業の失敗の責任を負わされ“飛ばされた”のだ。症状や病歴をたどり、ドクターGは問診だけで病気を絞り込んだ!

(番組HPより引用 http://www4.nhk.or.jp/doctorg/87/

わたしは、このVTRを見て早々に、「ああ、仮面うつ病だな」と思いました。

そして、途中でひとりの研修医が「仮面うつ病」という病名を口にしたので、「やっぱり!」とちょっと嬉しく(?)なりました(あとで早合点だったと分かるんですけれど)。

その研修医の言葉を受けて、進行役の先生が「うつ病の可能性がある場合、自殺の可能性があるため注意しなければならない」とも言われていました。

仮面うつ病とは、精神症状があまりなく、身体症状だけが現れるタイプのうつ病のことを言います。

なんでわたしのような素人が「体のあちこちが痛い」という訴えからすぐにうつ病の可能性に思い至ったかというと、少し前にこんなニュースを見たことがあったからです。*1

「うつの痛み」テレビCM、抗議受け一部変更

 「うつの痛み」をキャッチフレーズに、製薬会社が昨年10月からテレビCMなどで続けるうつ病啓発キャンペーンに対し、医師や患者、家族から抗議の声があがっている。

 CMは、体の痛みをうつ病の主症状のように伝えたが、国際的な診断基準に体の痛みはない。ナレーションが一部変更されたものの、「体の痛みで落ち込んだだけでうつ病にされる。薬を売るための過剰啓発だ」との厳しい批判は続いている。

(2014年2月1日 読売新聞)

*2

なるほどなるほど、うつ病で体の痛みが現れることもあるんだとついにNHKも取り上げたのか。製薬会社のキャンペーンの波及力はすごいなあ……

なんて思っていました。

ところが、実際には違う病気だったんです。

確かに患者さんはうつ病にもありがちな症状も訴えていました。

でも、朝よりも夕方のほうが症状が強いといった点が典型的なうつ病とは違ったんです。そこから進行役の先生が他の病気の可能性を示唆し、他の症状とも照らし合わせたうえで最終的には続発性副腎不全という病気だと診断されました。

コルチゾールというホルモンが分泌されにくくなる病気で、治療はコルチゾールを薬で内服することになるそうです。

つまり!

この患者さんは、もしうつ病だと診断されて抗うつ剤を処方されてしまっていたら、ずーっと病気が治らないままだったんです!

わたしは、これを見て、初めて「うつの痛み」のテレビCMが大きな批判を受けた理由のひとつがわかりました。

患者さんが「体が痛いし、なんとなく気分も落ち込むし、きっとうつ病だ」と早合点して思い込んでしまうと、病院での診断・治療の妨げになりかねませんよね……。

うつ病かもしれないからまず専門医にかかろう」と思ってもらえるように啓発すること自体は良いことだとは思います。

そして、きちんとした専門医にかかれば、うつ病なのか他の病気なのかの診断はきちんとしてくれるはずです。この番組のお医者さまもそうだったように。

でも、患者さんの側で「自分はこの病気のはずだ!!」という思い込みがあると、治療方針に納得がいかなかったりでうまくいかなくなることもあるかもしれないなぁ、と。

番組で取り上げられた続発性副腎不全以外にも、抑うつ症状が出る病気って、うつ病以外にもすっごくたくさんあるらしいですね。

うつ病が身近な病気であることが広く知られるようになったぶん、啓発のやりかたは丁寧にやっていかなきゃならなくなっているのかもしれませんね。*3

*1

それと、自分が実際に「仮面うつ病の可能性がある」とお医者さまに言われたことがあるからです(^-^;

わたしの場合は疲労感・倦怠感、食欲不振という身体症状が強く、気分の落ち込みはあまり自覚していなかったので、病院でうつの可能性があると言われて驚きました。

幸いにも抗うつ剤がよく効いたので、あれはうつだったんだなぁと今では納得していますが。

*2

※実際のCMはhttp://www.utsu.ne.jp/cm/で見られます。

*3

逆に、抑うつ症状が出る病気はうつ病以外にも色々あるということが広く知られるようになると、抗うつ剤を服用しているのになかなか良くならない患者さんが「自分はうつ病ではないのかもしれない」と勝手に自己判断で薬の服用を止めてしまう……というケースも考えられますし。

難しいですね。。。