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Pokémon GOのAR写真とか。アニメの感想とか。たまに難しいことも。不思議ちゃんの新婚生活13年目@東京をまったり記録。

"weep no more"

その夜、見上げた階段の上で、彼はひそやかに泣いていた。

大きなからだをその心ごと抱えるように。

 そうだった。

 いつだって、そうだった。

 見てはいけないものを見てしまうのは、

 コートのポケットに手を突っ込んで、あてもなく歩いているようなときだったのだ。

 誰も歩かない夜道を歩いて、もしもこのまま何かが途絶えてしまうのでも 構わなかったから。

遠くで電車の低い唸りが過ぎ去ったあとだっただろうか、

そのひそやかな泣き声が耳に流れてきたのは。

そっと階段の上を見上げれば、ぽつんとひとつ白すぎる蛍光灯の下で、

うずくまる彼がいた。

臥待月がようやく空高く上がる夜空、星などいらなかったのだろう、

どうせ彼は空など見ていなかったから。

(わたしは君の名前も知らない)

(わたしがたとえ君と時を過ごしていたことがあったとしても)

(わたしは君の助けになど、なりはしない)

それはクリスマスの夜で、

それがクリスマスの夜だったから、

全ての人の幸せを祈っても許されたのかもしれないけれど。

わたしは何も選ばずに、すすり泣く声をただ身にまとって、彼を見上げていた。

(わたしは君の名前も知らない)

(抱かれて差し上げましょうか、もしも君が望むのならば)

(それでもきっとわたしは、屋根裏部屋で君の目に、一粒の涙を見てしまうだけなのです)

全てを諦めて、それでも手を差し伸べられる日が、ひととせにいちどでも あるのなら

あるのならば

わたしはきみに ゆるしてもらえますか?

「どうか 泣かないで」

そんな祈りだけ、欠けた月へ、