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ウクライナ戦争(ちくま新書 著:小泉 悠 - 2022/12/8) レビュー

ウクライナ戦争 (ちくま新書 1697) 新書 – 2022/12/8 小泉 悠 (著)*1のレビューです。

ロシアが専門の軍事研究者が、ウクライナ戦争開戦の年(2022年)9月までの情勢について書いた新書です。
国際政治にも軍事にも疎いわたしですが、なんとか読み切ることができました。

ゼレンシキー大統領自身も大統領に就任するまではほとんどウクライナ語が喋れなかった(p.67)というのは初めて知りました。
「ロシア、ウクライナベラルーシが民族的・言語的に多くの共通性を持ち、多くの歴史を共有してきたことは客観的事実として否定はできないだろう。」(同上)
このことは、この戦争の背景、プーチンの思考回路を推測する上で示唆的でした。

ウクライナは無垢でも無謬でもないけれど、今回の戦争はロシアによるウクライナへの侵略戦争であり、ロシアは国際的な規範に違反している。また、ロシア軍の戦争犯罪(虐殺、拷問、性的暴行)は悪である。筆者はこう断じています(p.140)。
(ちなみに、2022年3月7日の東京大学大学院法学政治学研究科・法学部における藤原帰一教授の最終講義をオンラインで伺ったのですが、国際政治がご専門の藤原先生も「これは明確な侵略戦争である」「ロシアの言い分にも耳を傾けるべきだという立場には私は賛成することはできません」と語っておられました。)
冷戦や9.11以降の対テロ戦争を経て、わたしはこの世に絶対的正義や絶対悪はないのではないかと考えるようになっていました。ですが、ウクライナ戦争を機に、確かに悪は存在するし、それに対処しないといけないのだと弁えるようになりました。

日本の行く末を考えるには、「おわりに」がよくまとまっています。
第一に、我が国の抑止力をめぐる議論においては、ウクライナ戦争全体の趨勢により大きな影響を及ぼしたのが、非軍事的闘争手段ではなく、暴力闘争の場であったことを踏まえなくてはなりません。
第二に、核抑止は依然として大国の行動を強く縛っている、ということを今回の戦争は明確に示しました。仮に台湾有事が発生した場合、日本は中国の核恫喝を受けることになっても台湾を軍事援助すべきか、前もって国民的な議論が必要です。
第三に、この戦争の第一義的な責任はロシアにあることを踏まえ、大国の侵略が成功したという事例を残さないように日本としても努力すべきではないか、と筆者は問題提起しています。

もうすぐ8月になりますが、毎年8月になると、戦争を繰り返さないためにと言って戦争の悲惨さを強調するテレビ番組が放映されるなどします。今年は戦後80年目の節目なので、一層増えると予想されます。
ですが、真の平和を希求するなら、戦争の悲惨さを学ぶだけでなく、次の戦争が起こった時に日本がどういう立場を取るべきか、現実的な議論が必要な時代になったのではないでしょうか。
わたしも次は安全保障論の本を読んでみたいです。

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