政策起業家 ――「普通のあなた」が社会のルールを変える方法 (ちくま新書, 1625) 新書 – 2022/1/7 駒崎 弘樹 (著)*1のレビューです。
筆者の政策起業の経験をくだけた口調でわかりやすく解説している本。どの経験談も起承転結がはっきりした話になっていて、面白く読み進められる。
実際に政策起業家として活動するためのノウハウについてはあまり詳しくないので、駒崎氏の書いた別の書籍(社会をちょっと変えてみた――ふつうの人が政治を動かした七つの物語(駒崎弘樹/秋山訓子著・岩波書店・2016年))を読んだほうがよさそうだ。
印象に残ったのは、第7章の文京区の「こども宅食」の申し込み方法についての話。
筆者たちはLINEを使った申し込み方法を採りたかったが、文京区は難色を示したという。「LINEを持っていない区民もいるのではないか」という懸念だ。行政は全ての区民に平等に行政サービスを提供しなくてはいけないためだ。そこからすると紙での申し込みが最も安全だが、利便性が犠牲になる。
文京区の「こども宅食」は、異なるバックグラウンドを持った団体と行政が対等な立場でパートナーシップを組んだ「こども宅食コンソーシアム」によって運営されていた。したがって、行政からの委託事業と異なり、意思決定は民間非営利団体も含めた合議制となる。このため、LINEでの申し込み手法を採ることができた。
その結果、こども宅食の申し込み率は45%に及んだ。他区における同様の困窮子育て世帯向けの支援事業の申し込み率がだいたい15%程度だったので、そのおよそ3倍。一見誰でも利用できる紙の申請用紙よりも、LINEでの申し込みの方がハードルが低かったのだ。
行政による施策には平等原則など様々な制約がかかる。その制約を突破するための方策として参考になった。
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