溝口敦
新潮社 / 2011年9月16日発売
のレビューです。
まえがきの「暴力団のあらかたについては本書を読むことで、一般の方々にも理解できる」という言葉のとおり、ヤクザ・マフィアもののフィクションをほとんど読んだことがなく予備知識のないわたしでも読み通せました。
ただ、ところどころ暴力団やマフィアに関する予備知識が必要とされている記述も見受けられます。たとえば、
・バブル期に暴力団が地上げや株取引で稼いでいたこと(第六章、第七章)
・イタリアのシチリアマフィアやメキシコのコカイン・マフィアが凶暴であること(第七章)
といったことは詳しい説明がないままさらりと流されています。これは常識だろうと著者が判断したということなんでしょうかね。
2011年の出版ということで、関東連合OBによる市川海老蔵殴打事件や島田紳介の芸能界引退などのニュースには触れられていますが、2012年秋に福岡県の飲食店に脅迫電話が相次いだ件や2013年のみずほ銀行暴力団融資事件については当然ノータッチです。
これまで暴力団は必要悪だからなくならないと多くの人に信じられていたが、今後は、暴力団は「半グレ集団」などに取って代わられて消えていくだろう――というのが本書の中心的な指摘です。この指摘はおそらく正しいでしょう。では、風前の灯にある暴力団が最後の足掻きとしてどんな凶行に至るのか。福岡県の様子を見る限りとても怖いです。どう対処すべきか、同じ著者が2012年10月に刊行した「続・暴力団(新潮新書)」も併せて読んで考えたいです。