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Pokémon GOのAR写真とか。アニメの感想とか。たまに難しいことも。不思議ちゃんの新婚生活13年目@東京をまったり記録。

路上ライブから武道館での単独公演の夢を叶えた無名シンガーの著書を読んで。

路上から武道館へ

宮崎 奈穂子 (著)

中経出版 (2012/10/26)

http://www.amazon.co.jp/dp/4806145416/

本の中身については、Amazonに載っていた出版社からのコメントを引用させていただきます。

路上ライブから日本武道館での単独公演の夢を叶えた

シンガーソングライターの体当たりストーリー!

著者自身が「特別美人でもないし、歌がものすごくうまいわけでもない」と語るように、

もともとは、コンプレックスもあるし、将来について悩んだりもする、普通の子。

所属事務所の企画「サポーター会員(有料)を1年で1万5000人集めたら武道館ライブ」

に挑戦、356日目で見事達成し、2012年11月2日の武道館ライブを実現しました。

普通の子が、大きな夢を叶えた方法とは?

「私みたいな普通の子でも、夢は叶えられる」というメッセージを

本書を読んで、受け取ってください!

路上ライブ出身といえば、「ゆず」などの著名な歌手もいますが、宮崎奈穂子さんという方はメジャーデビューもされていないそうですし、テレビにも出ていないそうです。わたしもたまたま新聞記事で見かけるまで全く知りませんでした。

どうやら本当に「普通の子」みたいです。

<「いつか君も凄い人になれる」は嘘なのか>

わたしがこの本を読んでいたとき、ちょうどTwitterでこんなコラムが話題になっていました。

「キャリアポルノは人生の無駄だ」谷本 真由美(May_Roma)氏

http://wirelesswire.jp/london_wave/201211260725.html

May_Romaさんがキャリアポルノと呼んでいるのは、いわゆる「自己啓発書」や、世界的に有名な企業の創業者の「自伝」です。

彼女はこういったキャリアポルノを読んでも意味がない、と断言します。

なぜなら、「ハーバードも戦略コンサルもガレージから操業してどう、も我々には関係ないんですよ。多分勤労人口の99.99999%には関係がない。(中略)何の後ろ盾もなく会社を興して数千人の組織に育てるって、常人じゃ無理なんですよ。遊びも何も犠牲にして働ける気力と体力、それに、「絶対に金が欲しい」「俺は組織をでかくしたい」という怨念がなきゃ無理なんですから。そんな怨念じみた意欲がある人ってね、普通じゃないんですよ、普通じゃ。」

――つまり、いわゆるグローバル人材やら偉大な創業者といった人たちは、普通じゃない人たちなんだから、

99.99999%の人間たる私たちには彼らの生き方は参考にならない、というわけです。

さらに、May_Romaさんは「ちなみにイギリスの本屋もイタリアの本屋もドイツの本屋も、こういうキャリアポルノが全然売ってないんです。なんでないかというと、99%の人々は最初から自分もジョブスや勝間女史になれるとは信じてないし、なりたくもないし、なりたいと思う機会もないんです。(中略)欧州人は「いつか君も凄い人になれる」は偉大な嘘だとわかっているんです。」と指摘します。

しかし、「一方、アメリカや日本では「いつか君も凄い人になれる」という嘘のお話が好まれます。」

だから、日本ではキャリアポルノが売れてしまうのだ、

本当は「いつか君も凄い人になれる」なんて話は嘘なのに――と続けます。(※)

<キャリアポルノと本書の違い>

こんなMay_Romaさんの主張と、「路上から武道館へ」で宮崎奈穂子さんが伝えていることはまるで真逆です。

武道館公演の夢を叶えた宮崎奈穂子さんは、本書でこう語っています。

当たり前のことを続ければ、誰でも大きな夢を叶えることができるはずです。

宮崎奈穂子が武道館に立てるんだったら、私だって、僕だって、何かできるんじゃないか」

 自分の路上ライブや曲を通じて、一人でも多くの人に、このように思ってもらうことが、私の使命だと感じています。

「いつか君も凄い人になれる」というMay_Romaさんが「偉大な嘘」と指摘した夢物語を、彼女は真っ向から肯定しています。

夢物語を吹聴して、読者を退屈な日常から逃れさせて夢に酔わせて、印税(彼女の場合は本だけでなくCDからも入ってきますね)をふんだくる。

これだけ見れば、本書は典型的な自己啓発書、「キャリアポルノ」です。

でも、たぶんこの本は「キャリアポルノ」とはちょっと違います。

なぜなら彼女は「普通の子」が「普通に仕事をする」ことでどう夢を叶えるか、ということを書いているからです。

彼女は、夢を叶える方法として「自分の可能性を信じ続けること」「行動を続けること」「ご縁を大切にすること」の3つを挙げています。

このなかで彼女の「普通の子」っぽさがいちばん表れているのは「ご縁を大切にすること」だと思います。

この章で彼女は、路上ライブで少しでも多くの人に足を止めてもらえるように色んな細かい気配りをしていることを述べています。たとえば、「1曲聴いてください」ではなく「3分だけ聴いてください」と言って、終わる時間の目安を示すとか。客層に合わせて選曲を変えるとか。

こういう彼女の努力は、普通のサラリーマンやOLが仕事をしているときに「どうやって○○(顧客とか仕事のカウンターパートとか)に話を聞いてもらうか」で悩んだりするのと、すごく似ているなぁって思うんです。

また、路上ライブ終了後のお礼のあいさつは、マイクを使わずに大きな声で言う、といった感謝を表す方法についてもページが割かれています。そして、彼女はファンや所属事務所などの関係者のみならず、路上ライブの敵である警察官にまで感謝の念を表しているのです。

誰もが知ってる偉大な創業者スティーブ・ジョブズが、周りの人にとってはものすごーく扱いづらい人だったのとは対照的ですね。

夢の内容が「武道館ライブ」っていう、普通のサラリーマンやOLには全く異なる世界のお話なので、一見すると普通に見えないんですけどね。

この本を読んで、彼女はサラリーマンやOLが毎日のように会社に行くかわりに、毎日のように路上ライブをしているのだ、ということがわかって、彼女とわたしたちの共通点が掴めました。

サラリーマンやOLの仕事には「武道館」ほどわかりやすい目標はないことが多いと思いますけど、“毎日あくせく仕事を続けて目標を達成する”というところだけ見れば、彼女のやってることと大きな違いはないのではないでしょうか。

とゆーわけで、普通の人だってその人なりの夢は叶えられる、ただしそのためには毎日マジメに仕事して、周囲の人とのご縁を大切にするしかないんだぜ、っていう当たり前なんですが実はめちゃくちゃ難しいことを再認識できる、そんな本でした。

 * * *

<ゆーりんにとっての「武道館」>

さて、この本を読んでわたしは考えました。

わたしにとって「路上ライブ」や「武道館」に当たるものは、なんなんだろう、と。

宮崎奈穂子さんは、「武道館という夢に向けて、食欲や睡眠欲、恋愛をしたい欲求をすべて犠牲にする生活を送ってきました。私にとって武道館が夢へと突き進む大きな原動力であるように、みなさんにも原動力となる夢があるはずです。その夢を大事にすることで、どんな困難も乗り越えられるのではないでしょうか。」と言っています。

じゃあ、わたしにとって原動力となる夢はなんだろう……って。

今は、よくわからないんです。

わたしは曲がりなりにも就職活動(それもけっこうな難関とされているところの)に通ったんですから、その頃は仕事に夢を持っていたし、説得力をもってその夢を語ることができていた、ということのはずなんです。なのに、なんでだろう。

なんだかぽっきり折れちゃった、って気がしています。それがうつという病気になってしまったということなのかもしれません。

<なぜ夢を持つ必要があるのか>

一方で、そもそもわたしに夢ってあったのかな、という疑問も持っています。

病気になる前から、わたしは「毎日何かをする」ということや「継続して取り組む」ということが大の苦手でした。好きでたまらなくてこれなら毎日できる、というものに出会ったことがないのです。強いて言うならマスターベーションぐらい……げほげほ

なので、履歴書の趣味欄に書くことすら困った有様です。

それに、「○○になりたい!」という明確な将来の夢をもったこともなかったという記憶があります。

でも。

もしかしたら、将来の夢なんてなくたって生きていけるのかもしれません。

May_Romaさんも言ってるじゃないですか。「いつか君も凄い人になれる」は嘘なんです! 夢なんてなくたって、毎日の仕事を頑張って、毎日の生活を楽しめばそれでいいじゃないか!

それでもどうしても割り切れない事情がゆーりんにはあります。

わたしは旦那さんにも医者にもカウンセラーにも揃って「自己評価が異常に低い」と言われています。自分に自信がないのです。

たとえば、就職活動のときに「適性診断」ってやりますよね。「人と一緒に何かをすることを好む――あてはまるか、あてはまらないか」みたいな数十個の質問に答えていくと、自分が得意とする能力・苦手とする能力を診断できますよー、みたいなアレです。

アレやってみたら、見事に「苦手とする能力」ばかりだったんですよ。あまりに衝撃的だったんでスクリーンショット保存してあるんですけど、こんな感じ。

Tokuinigate_2

いやいやいやいや、いくらなんでも自己評価低すぎるだろー。「書く能力」がないのにどうやって某国立大学の大学受験に突破したのさ、みたいなw(某国立大学の試験は、センター試験みたいなマークシート形式だけではなく、けっこうな分量の文章を書かされます)

なぜそんなに自己評価が低くなっちゃったのか、自分でもなんとなくわかっています。

ひとつは、継続して取り組んだことが全くないこと。

もうひとつは、最後まで諦めずにあらゆる手段をとって何かを勝ち取ったという経験が全くないこと。

これらが強い劣等感につながっているのです。

今は、「病気だから」という言い訳が自分にできます。何も継続してやっていないことに対して、今だけは劣等感から免れることができます。「何もしないのが治療なんだからしょーがないじゃん」と。

でも、病気の再発を防ぐには、この強すぎる劣等感をどうにかして、自分が自分に与えてしまうストレスを取っていかないといけないんです。

つまり、何かを継続してやって、何かを成し遂げて、つまり夢を持って夢を叶えて、劣等感をふっ飛ばさないといけない。

……じゃあ、わたしは何をやりたいんだろう。わたしの夢ってなんだろう。

そうして途方に暮れてしまうことに、病気を言い訳にできるのでしょうか。。。

(※)ただし、May_Romaさんが言いたかったことは、「いつか君もすごい人になれるなんて話は嘘なのにみんな騙されちゃってカワイソスwww」という嘲笑ではないでしょう。Twitterのほうでこんなつぶやきをされています。

「若い人は自己啓発本とかセミナーに金使わないで、美味しい物でも食べて健康になりなさい。自己啓発本読む代わりに睡眠取りなさい。親温泉に連れて行きなさい。友達と楽しい話をしなさい。その方が15000倍は有益。人生は凄く短いんだよ。 http://ow.ly/fzBsB」(2012年11月26日 - 3:08)(https://twitter.com/May_Roma/status/273050666694483970