長いときを経て見つけた三日月は、
孤高の月などではなかった。
広すぎる空のなか、それはあまりにも小さく、
密やかな明かりを灯す線路の上、ぎこちなく震えるような。
阻むものが取り去られて、星さえ見えるこの夜の空。
想うあの子は、
どうして自由に羽ばたかないのだろう?
この月は、輝かない。空を切り取っているだけ、それだけ。
そうして気づいたこと、ひとつ。
わたしは今でも、心の中で三日月を縛っている。
いつまでも震えていて、いつまでも泣きじゃくっていて欲しいのに。
わたしの傍でだけ、笑っていてくれたら。
そんな夢想を抱かせるのは、この三日月があまりにも小さいから。瞬きをやめない星を添えて、よるべないから。だから。
そうならいいのにね。
あの頃、恋焦がれていたあの子を映していた頃、
三日月は、電線に阻まれて、ネオンに薄くけぶる"夜空"のうえで、なお、
白かった。